ちなみにわが国においても、計量の単位は計量法(昭和二十六年、法律第二〇七号)で定められており、海里の定義は、関係法令である計量単位令の別表第六(第五条関係)に次のように記載されています。
特殊の計量 海上又は空中における長さの単位
計量単位 海里
定義 一メートルの一、八五二倍
4、領海の基線
領海および接続水域に関する法律により、わが国の基線は低潮線、直線基線および湾口及び湾内もしくは河口に引かれる直線と規定されています。
海と陸の境のことを一般に「海岸線」と言っていますが、海岸には常に波があり、潮が満ちたり引いたりしているため、水のあるところと陸との境目は絶えず変わっています。海図では、これ以上には海水が上がって来ないであろうと考えられる海面(略最高高潮面)に達した時の陸地との境界線を海岸線と言い、これ以下に潮が下がることがほとんどないような海面(略最低低潮面)と陸地との境界線を低潮線と言っており、この海岸の低潮線が通常の領海の幅を決める基準となります。またこの二つの海面の間にある部分を干出と言います。
低潮線は海図上では干出の外縁にあたり、この干出の中で周囲を水に囲まれて独立している干出岩などを低潮高地と言い、この低潮高地も領海の基線となります。また低潮線と海岸線の間に出来る水域は領海の基線の陸地側なので内水となります。
直線基線は、領海法の一部を改正する法律により、新たに領海等の幅を測るための基線として加えられたもので、平成九年一月一日から施行されています。
昭和五十二年の領海法制定当時は、直線基線を採用している国はわずかでしたが、諸国の海洋への関心が高まっている今日では、多くの先進海洋国を含む約七〇以上の国が採用しています。
直線基線は海岸が著しく曲折している場所や海岸に沿って至近距離に一連の島がある場所に引くことができる基線です。わが国の海岸線は曲折し(海岸線総延長、三三、八八九キロメートル)、多数の島が存在する(外周一〇〇メートル以上の日本沿岸島しょ数、六、八五二)ため、通常の基線、すなわち低潮線のみから測定される領海の限界線は複雑に入り組むことになります。
しかし、直線基線が設定されることにより領海の限界線は直線的になり航海者にも分かりやすくなります。直線基線の基点の具体的な位置については、領海及び接続水域に関する法律施行令に定められていますが、ほぼ全国に合計一六二本の基線が引かれています。直線基線が引かれた海域の領海の限界線はこれまでより沖合に移動することになり領海の面積(内水を含む)も従来の約三八万平方キロメートルから、約四三万平方キロメートルになります。
またわが国を取り巻く状況を見渡せば、中国、韓国およびロシアは既に直線基線を設定しており、わが国も直線基線を採用したことにより、これら近藤国と同じ土俵に上がったと言えます。(図2、3)
なお、(財)日本水路協会からわが国の直線基線の経緯度の一覧表と基線の位置をわかりやすく白地図上に描画したものを収録した小冊子「日本の直線基線」(A4判、二八頁、二百円)が発行されています。(図4)
湾と河口にも基線は引かれています。これは低潮線と共に従来から採用されていた基線です。湾とは、明白な湾入があり、湾入内の面積が湾口を横切って引いた線を直径とする半円の面積以上である、いわゆる半円規定を満たすことが必要です。湾口の幅が二十四海里を超えない場合は、その湾口に直線が引かれ、湾口の幅が二十四海里を超える場合は、湾内に二十四海里の直線を、この線で囲まれる水域の面積が最大となるように引かれています。
河口については、湾のような幾何学的条件規定はなく、海に直接流入している河川の河口すべてに直線が引かれています。
国連海洋法条約では、直線基線等の特例的な基線については、基線または限界線等を海図に表示し、適当に公表するとともに国連事務

 

 

 

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